企業の来訪者は、一般来客、重要来客、団体、また配達など様々だ。できるだけコストはかけたくないが、セキュリティは確保したい。そして、企業イメージも気にしつつ、受付における滞留も避けたい。矛盾しそうな要件が重なり、その最適解を見つけるのはなかなか大変だが、スムーズで、セキュアで、簡素で、コストパフォーマンスもよい受付システムが求められることになる。そして、この課題に取り組む受付システムのひとつとして「VisitView」がある。
受付システムのソリューションのタイプには、大きく2つのタイプがある。ひとつは、来訪時の連絡を主な役割とするシンプルなもので、もうひとつは、QRチケットやICカードなどの来訪パス(入館証)の発行、セキュリティゲート連携など、比較的大掛かりなものだ。
「VisitView」は後者の受付システムで、20年以上に渡って様々な受付業務の知見を詰め込んできた。
さて、この受付システムのエピソードは、この「VisitView」への道のりを辿るものになる。そして、それはWebビデオ受付システム「なっちゃん」に始まり、「なっちゃん2」を経て、来訪管理受付システム「なっちゃん3」という製品の変遷でもある。
(01)なっちゃん【1999年~】芽吹き

1996年、「コミュニケーションコレクション」として、ソケット通信、Waveマイク、Waveスピーカ、およびチャットボックスで構成されるコンポーネント製品をリリースしていた。
ニーズもなかったのか販売も行き詰ったころ、それならば自分たちでこれをシーズにアプリケーションを作成してみようと考えた。そして、これにWebカメラとビデオ通信も加えて開発したのが、Webビデオ受付システム「なっちゃん」だった。
この「なっちゃん」の名前の由来だが、受付の女性をイメージして、”あ”から、”あっちゃん”、”いっちゃん”、…と耳障りを確認し、親しみやすく受付にピッタリの名前として残ったのが、”なっちゃん”だった。営業中にもこの名前の由来はよく聞かれた。その時は説明が面倒なので「ナルボの”な”から名付けた」と答えている。
ちょうど、Windows95(1995年)からインターネットが一般的になりつつあった時期で、「企業の受付電話に代わるものとして売れるはず」だった。が、売れなかった。考えてみれば、企業の受付での取り次ぎには内線電話で十分だったのだ。インターネット電話にする必要がなかった。
このWebビデオ受付システム「なっちゃん」の主な役割は来訪の連絡をすることだが、このコンセプトの受付システムは、現在、各種チャットツールへ連携するシステムとして一般的になっている。ひとまず受付システムといえば、このタイプをイメージすることが多いと思う。ちなみに、Microsoft Teams、Slack、LINEなどのチャットツールは、1999年には存在しなかった。
(02)なっちゃん2【2004年~】継続

結局、Webビデオ受付システム「なっちゃん」は1セットも売れなかった。
そこで懲りずに、来訪前の来訪予約をWebページから可能とし、来訪時にその突合せ、名札の印刷、来訪ログの管理などの機能も加え、「なっちゃん2」としてバージョンアップした。
更にそれなりのカタログなども作成し、それなりに営業はしてみたが、引き続き売れなかった。やはり内線電話に代わるニーズも環境もなかったのだ。
(03)なっちゃん3【2006年~】再生

結局、Webビデオ受付システム「なっちゃん2」も1セットも売れなかった。
そんな時、某‐S社から「なっちゃん2」について知りたい旨の連絡が入った。10,000人規模の事業所で毎日1,000人以上の来訪者を受け付ける受付システムとして利用可能か打ち合わせしたいとのことだった。
要件として通話は不要で、担当者による①事前来訪予約、有人の受付における②「QRコード付き名札印刷(入館)」、③「そのQRコードで退館」、そして、④「入退館ログ管理」が要求された。
「なっちゃん2」のWebページに掲載されていた①「来訪予約」、②「名札印刷」、④「来訪ログ閲覧」に反応してくれたのだ。
短期間ではあったが、S社の要望をしっかり取り込んだ「なっちゃん3」が完成した。
実稼働後も何度か伺う機会があり、自分たちも「なっちゃん3」で受付されることもあり、受付の様子を見ることができた。そこでは、受付の方がとてもスムーズに受付処理をこなしていた。(嬉しかった)1日1,000人以上の来訪者の入退館をスムーズにこなしていたのだ。
S社で毎日、多くの来訪者を受け付けていたこともあってか、某‐N社から現在建築中の大型のテナントビルでこれを使えるかという打診があった。調整要件として、「QRコード付き名札印刷」の代わりに、①「ICカードの発券(入館)、退館」、②「複数のテナントでの運用」などがあった。
そして、これらを反映した新しいバージョンは来訪管理受付システム「なっちゃん3」として完成することになる。
この「なっちゃん3」は、最初のWebビデオ受付システム「なっちゃん」とはその製品コンセプトもだいぶかけ離れてしまったので、2019年、親しみやすさから名付けた「なっちゃん」からビジネスライクな製品名として「VisitView」とした。ちなみに、この製品名は人気のあったコンポーネント製品の「TimeView」にあやかったものだ。また、「Visit」は、「受付」よりも「来訪者」の視点を意識して付けた。そして、この来訪管理受付システム「VisitView」は、来訪パス(入館証)による受付業務を必須とする企業向けのソリューションとして、その後も多くの顧客のニーズに応えていくことになる。
(04)飛躍

2019年頃からだったと思うが、無人受付の話が、ちらほら出始めた。
チケットのプリンタは有人受付のバリエーションとして考えられたが、ICカードの発券機がなかなか見つからなかった。これが見つかったら無人受付端末(KIOSK端末)の試作機を作ってみたかった。
そこで、まずKIOSK端末を作成してくれる会社を探した。そして、「株式会社ビジカ」(Busica Ltd.)という会社を探し当てた。(現在もお世話になっている)
さっそく、取締役(COO)の柏木さんとお会いして一通りの打ち合わせをした後の会食中、「ICカードの発券機が見つからないんですよ」というと、柏木さんは、「ありますよ」と即答された。(あれ、結構Webで検索したはずなのに)
ICカードの発券機のようなユニットは、検索できなかったが、その界隈では当たり前のようだ。何はともあれ嬉しくて、その場で柏木さんに試作機を発注した。この最初の試作機はチケット、ICカードの両方に対応したものだった。
試作機ができて間もなく、某‐テレビ局から自社の受付システムとして「VisitView」の導入を検討したい旨の打診があった。無人受付機の導入が必須の要件だったが、すぐに実際の無人受付端末でプレゼンテーションすることができた。これが良かったのか、QRチケットの無人受付機での導入が決まった。
試作機の開発のきっかけはICカードの発券機だったが、ビジカの柏木さんとの会食から試作機の作成、そして実機によるプレゼンテーションが、この導入までつなげてくれた。
■ICカード発券端末

無人受付端末におけるチケットの発券は、発券操作から1秒程度で印刷が開始され、3秒ほどで印刷は終了(発券)する。一方、ICカードの発券は、①「繰出し」⇒②「読み取り」⇒③「排出」の手順となるが、①「繰出し」によるカード運搬に時間を要する。(3秒程度)
1枚の発券時間に大差はないが、チケットは印刷が進む工程を確認できるため、待たされる印象が少ない。これに対しICカードの発券は、最初の①「繰出し」(内部動作)に時間を要するため、待たされる印象がある。
そこで、「VisitView」では1枚目の①「繰出し」を事前に動作させ、発券操作からすぐに発券できるように工夫している。②「読み取り」の制御も絡み難しい点はあったが、発券の速さに驚いてもらえることが度々ある。(嬉しい)複数枚を発券するケースでは、2枚目以降はそれなりの時間を要するが、1枚目が速いことでストレスになりにくい。
■インターフォンアプリ

無人受付端末の操作は利用者に任されるため、来訪予約情報を持参していないケースや、操作に不慣れなケースなど、想定外のケースも発生する。このため、内線電話やインターフォンで受付(警備室)につなげたい場面は少なくない。
そこで、「VisitView」では、無人受付端末から受付(警備室)の内線電話へつなげることや、「インターフォンアプリ」へつなげることができる。
「インターフォンアプリ」はインターネットを介して音声と画像による通話を可能とするいわゆる音声通話アプリだが、1996年に開発したコンポーネント「コミュニケーションコレクション」のノウハウを活かすことができた。1996年当時と開発や動作環境は大きく変わったが、設計レベルでは同様に考えられた。
■リモート発券

先のとおり、無人受付端末における想定外のケースでは、内線電話やインターフォンで受付(警備室)につなげることが一般的だが、更に受付(警備室)サイドからリモート発券できるとベターだ。
そこで、「VisitView」では、先の「インターフォンアプリ」において、受付(警備室)サイドからリモート発券することができる。当たり前だが、これは、無人受付端末とインターフォンが連携していなければ実現できない。
2026年時点でこれができる受付システムは「VisitView」だけだ。
■来訪票のキャプチャ

「インターフォンアプリ」により、受付(警備室)サイドからリモート発券する場面では来訪者の名前などを確認する必要がある。
そこで、「VisitView」では、無人受付端末において利用者に記述済みの来訪票をかざしてもらい、これを受付(警備室)サイドから確認、キャプチャしてリモート発券することもできる。来訪票を介して来訪者(無人受付端末)と受付(インターフォンアプリ)による一連の操作をリモート感なく進めることができる。これは、「VisitView」の無人受付端末の自慢の仕掛けだ。
(05)過去から未来へ

大掛かりな受付システムは、①情報処理系、②機器制御系、③ネットワーク系の技術が必要となる。結局、これらをまたいで対応できる会社は総合電機メーカーで情報通信にも強い会社になってしまう。代表的な会社としてNECやパナソニックなどの会社がある。
そして、このような大手メーカーがカスタマイズベースで対応することになるため、どうしても開発期間と想像以上の費用を要する。
「VisitView」は、短期間、低価格を実現するため、開発に当たってそれぞれの案件ごとにカスタマイズするのではなく、設定パラメータを用意して対応する設計コンセプトとした。この設定パラメータは、既に1,000を超える。これによりデータモデル、データベースなどの設計やメンテナンスは複雑になるが、圧倒的な短期間、低価格での提供が可能となる。また、来訪パス(入館証)が今日までICカードでも明日からQRチケットに代えるなど、稼働後の調整にも柔軟に対応できる。
インターネットの普及、開発、実行環境の向上などの背景もあり、受付システムは既に大手メーカーだけのものではなく、ナルボのような小規模の会社でも対応できるシステムとなった。(時代は変わるものだ)
振り返れば、1996年の「コミュニケーションコレクション」というシーズから始まり、Webビデオ受付システム「なっちゃん」「なっちゃん2」を経て、「VisitView」の原型となる来訪管理受付システム「なっちゃん3」にたどり着いた。
コンポーネント製品によるビジネスモデルは成功こそしなかったが、その開発は無駄ではなかったことに感謝したい。