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【サイドビュー】03‐ソフトウェア部品(1996年~2002年)

【サイドビュー】

【1996年〜2002年】日本から世界へ、コンポーネントで挑んだ時代

年表:ナルボ・コンポーネント開発の軌跡

  • 1996年:『タイムコレクション』(OLEコントロール)、『コミュニケーションコレクション』(OLEコントロール)
  • 1998年:『データアクセスコレクション』(OLEコントロール)、『スーパーグリッド』『スーパーテキストボックス』『タイムビュー』『タイリングボタン』『クイックソケット』(ActiveXコンポーネント)
  • 1999年:『コミュニケーションボード』(ActiveXコンポーネント)
  • 2000年:『クイックFTP』(ActiveXコンポーネント)、『Word Reports』COMアドイン(MS-Office)
  • 2001年:『e-ハンコ』(ActiveXコンポーネント)
  • 2002年:『e-スタンプ』COMアドイン(MS-Office)
  • 2024年:『Time View for Web』(Webコントロール)

01. ソフトウェア部品で世界を目指して

1995年、ナルボは社名を「Knowlbo」へ改称し、コーポレートロゴを一新。新たな製品開発へと舵を切りました。

当時はまさにVisual Basic(VB)の全盛期。米国をはじめとするサードベンダーから、数多くのソフトウェア部品「OCX(OLE Control eXtension)」──いわゆるOLEコントロール(※)がリリースされていた時代です。ボタンやテキストボックス、グリッド、グラフ、通信機能などをカプセル化したこのコンポーネント技術は、アプリケーション開発の現場を強力に支援していました。

※ OLE(Object Linking and Embedding)とは Windowsアプリ間でデータ連携を行う技術(読み:オーレ)。OLEコントロールもこの仕組みを利用してアプリケーションと連携していました。

市場に流通するOLEコントロールの多くは米国製品の日本語化版でしたが、ナルボは自社主導でのコンポーネント開発を決断します。「日本発のソフトウェア部品で、本気で世界へ挑む」──それが当時のナルボの大きな野望でした。

02. Internet Explorerの台頭とActiveXの時代

1995年、マイクロソフトが「Windows 95 Plus!」とともにWebブラウザInternet Explorer(IE)をリリース。翌1996年にはIEの拡張機能としてActiveXコンポーネントのサポートが始まり、OLEコントロールはWeb環境へと一気に広がっていきました。

1997年2月には、市場の拡大と技術交流を目的に「ActiveXベンダー会(AVA)」が発足。日立製作所や翔泳社、協賛のマイクロソフトやアスキー・ネットワーク・テクノロジーなど大手企業が名を連ねたこの会ですが、実はコムラッド社の高根社長がナルボに話を持ちかけ、ASP社と共に立ち上げたことが発端でした。

その後、月刊誌『Visual Basicマガジン』(翔泳社)に広告を出稿していたベンダーが続々と参画。しかし振り返ってみれば、業界全体が盛り上がった一方で、参加ベンダー個々のビジネス的メリットは限定的だったのかもしれません。

当時の取り組みを示す印象的なエピソードがあります。日立製作所の部品組み立て型ビジュアル開発環境「APPGALLERY」のカタログ内「Partner’s Voice」に、ナルボのインタビューが1ページにわたり掲載されました。

【APPGALLERY カタログ掲載文より抜粋】

  • コンポーネントウェアへの取り組み:「エンジニアの満足を大切にし、売り切りではない製品提供を目指す。最終照準はU.S.市場。そのため現在の日本語版製品にも、あえてバージョンに”J”を付与している」
  • ビジネスの課題と展望:「ユーザーが最も恐れるのは障害発生と仕様の不一致。手厚いサポートやカスタマイズに応えるため、ランタイム使用数に応じた価格体系の導入も検討範囲である」
  • APPGALLERYとのタイアップ:「案件適用にはカスタマイズやバグ対応への真摯な姿勢が求められる。本質的な利用形態を見失うことなく、市場拡大に向けて積極的に連携を進めたい」

03. 原点となった『タイムコレクション』(1996年)

ナルボ初のコンポーネント製品は、1996年に登場した『タイムコレクション』でした。時計、カレンダー、タイムチャートなどのOLEコントロールを1つにまとめたコレクション製品です。

当時のナルボは、テーマごとに機能をパッケージ化して提供するスタイルをとっており、同年の『コミュニケーションコレクション』、1998年の『データアクセスコレクション』へと続いていきます。

正直に明かすと、この『タイムコレクション』自体は決して爆発的に売れた製品ではありませんでした。しかし、収録されていた「タイムチャート」がのちに『タイムビュー』として単体リニューアルされ、ナルボを代表するヒット商品へと成長します。

そのDNAは、現在もWebコントロール『Time View for Web』の中に生きています。『タイムコレクション』という挑戦がなければ、その後の歴史も存在しなかった──そう考えると、実に感慨深い第一歩でした。

04. ヒット作『タイムビュー』とライセンスモデルの戦い(1998年)

1998年にリリースされた『タイムビュー』(現在Ver.3)は、ガントチャート表示を強力にサポートするコンポーネントです。国産唯一のガントチャートとして豊富な機能を備え、長年にわたり圧倒的な支持を集めました。現在も64ビット版の需要は高く、Web版への移行ニーズも絶えません。

もし『タイムビュー』を使わずに複雑なガントチャートアプリを一から自作する場合、機能を妥協するか、数千万円規模の開発費を上乗せするしかありません。だからこそ『タイムビュー』は確固たる存在感を放ち、140万円以上のサーバーサイドライセンスや400万円以上のプロダクトライセンスもしっかりと受注することができました。

ここで重要なのが「ランタイムライセンスの有料化」というナルボの姿勢です。

当時のActiveX市場は米国主導であり、「開発ライセンスは有料、ランタイムライセンス(配布)は無料」が常識でした。しかしナルボは、「利用規模に応じた適切な対価を得なければ、開発元は技術投資を継続できず衰退し、最終的に利用者の不利益になる」と確信していました。

ActiveXベンダー会でこの議論を持ちかけたものの、米国流が根強い市場では受け入れられず、ナルボは単独でランタイム有料化へ踏み切ります。結果としてこの決断がビジネスを成立させ、長年のサポート継続と後継製品『Time View for Web』の開発を支えることとなったのです。

05. 「シーズ」から「ニーズ」へ──『VisitView』前夜(1996年〜)

『コミュニケーションコレクション』(1996年)は、ソケット通信、Waveマイク/スピーカー、チャットボックスを組み合わせた先進的な通信コンポーネントでした。

組み込むだけでリアルタイムなネットワークコミュニケーションが実現できるユニークな製品でしたが、「時代が早すぎた」と言えます。リモートワークが当たり前となった今でこそ必須の技術ですが、25年前にはまだ切実な需要がなかったのです。

そこでナルボは、この技術(シーズ)をベースに自社でアプリケーションを構築することを考えました。Webカメラやビデオ通信機能を加え、開発したのがWebビデオ受付システム『なっちゃん』です。

  • 初代『なっちゃん』:企業の受付電話をWebビデオ化する試み。しかし「内線電話で十分」という壁にぶつかり不発。
  • 『なっちゃん2』:事前予約や名札印刷、来訪ログ管理機能を追加。しかし、まだ決定的なニーズを掴めず。

転機は突然訪れます。大手S社から「10,000人規模の事業所で受付システムとして使いたい」と打診が入ったのです。求められたのはビデオ通信ではなく、「事前予約」「QRコードによる名札印刷と入退館管理」でした。

S社の要望を反映して短期集中で作り上げた『なっちゃん3』は、実稼働後、1日1,000人以上の来訪者をスムーズに処理するシステムとして大活躍します。さらにこの実績を見たN社から、新築大型テナントビルへの導入打診が舞い込み、「ICカード発券・マルチテナント対応」へと進化を遂げました。

この流れるような試行錯誤の歴史こそが、のちの無人受付システム『VisitView』へと繋がっていきます。最初から完璧な計画(成功ありきのプラン)ではなく、市場や顧客と向き合いながら泥臭く試行錯誤を重ねたからこそ生まれたイノベーションでした。

06. 隠れた名作『クイックソケット』(1998年)

『コミュニケーションコレクション』からソケット通信機能「イージーソケット」を単体化・改称したのが『QuickSocket(クイックソケット)』です。

Windowsソケットをビジュアル操作で簡単に扱えるのが特長で、サーバー/クライアント双方に配置してIPアドレスやポート番号を指定するだけで通信が確立できました。通信時にソケットアイコンがパタパタと送受信を表現する愛らしいUIも人気の一因でした。

後半に無料化したこともあり、数多くのアプリケーションの裏側で密かに採用されました。

余談ですが、Windowsやデータベースに精通したエンジニアであり、Webサーバー監視ソフト等の開発でも知られる秋月巌氏も、実は『クイックソケット』の熱烈なファンのお一人でした。鋭い哲学と圧倒的な技術力を持つ彼に評価されたことは、ナルボのひそかな誇りです。

07. 流通の洗礼──1990年代の販売現場

今日でこそWebでの直販やダウンロード販売が主流ですが、1996年当時は「技術誌への広告掲載」と「流通(販売店)ルート」が圧倒的な正攻法でした。

1998年、ナルボは『データアクセスコレクション』のパッケージとデザインを持ち、当時のソフトウェア流通の巨人・ソフトバンク社へ営業に赴きました。

しかし、結果は散々なものでした。毎日2,000タイトル以上もの新製品が持ち込まれる世界。実績のない零細企業のパッケージなど、まともに取り合ってもらえるはずもありません。ほぼ門前払いという形で厳しい現実に打ちのめされました。

この苦い経験は、ナルボにとって大きな教訓となります。

  1. 企画・開発
  2. 営業・販売
  3. サポート

製品を世に届けるには、開発と同等以上のエネルギーを「販売」そして「サポート」に注がねばならないという当たり前の事実を、痛烈に学んだ瞬間でした。

08. 渾身のストレートと挫折──『データアクセスコレクション』(1998年)

入力系UIを効率化するため、データ入力用テキストボックス「バリアントボックス」とDB連携グリッド「スーパーグリッド」をセットにした『データアクセスコレクション』を投入。

先の2作品を「ジャブ」とするなら、これは市場の真ん中を打ち抜く「渾身のストレート」のはずでした。

しかし、業務アプリで最も求められる入力系コンポーネントは競合が極めて激しいレッドオーシャン。他社製品との明確な差別化を打ち出せず、売り上げは伸び悩みました。ナルボのコンポーネント事業は、ここから一時的な試行錯誤の迷路へと迷い込んでいきます。

09. 痛恨の選択ミス──『スーパーグリッド』(1998年)

『データアクセスコレクション』のテコ入れとして、「スーパーグリッド」を単体化して広告展開を行いました。しかし、状況は変わりません。

のちに判明した敗因は明確でした。当時の開発者が真に求めていたのは「DB連携のグリッド」ではなく、「計算式と再計算をサポートするスプレッドシート(表計算)型」だったのです。

これはナルボにとって痛恨のミスでした。なぜならナルボは、過去のエピソード(第02話)にある通り、DOS時代からスプレッドシートの技術ノウハウをどこよりも豊富に持っていたからです。需要の核心を知っていたはずなのに、時代の選択を掛け違えてしまった──技術とニーズの噛み合わせの難しさを知る出来事でした。

10. 『e-ハンコ』と『e-スタンプ』──『ワークフローEX』への伏線

  • 『e-ハンコ』(2001年):印鑑イメージを生成するActiveXコンポーネント
  • 『e-スタンプ』(2002年):ExcelやWord(MS-Office)に印鑑機能を組み込むCOMアドイン

『e-スタンプ』は内部で『e-ハンコ』を呼び出し、Office文書上に電子印鑑を捺印する仕組みでした。当時は単体の便利ツールという位置付けでしたが、この技術がのちにナルボの主力製品となる『ワークフローEX』のコア機能として大化けすることになります。

「ExcelやWordの申請書フォーマットをそのまま運用し、画面上で電子捺印する」という『ワークフローEX』の大ヒットアイデアは、この時代の要素技術が見事に噛み合った結果でした。過去の点の技術が、未来の線となって繋がった瞬間です。

11. そして「Webコントロール」の未来へ

振り返れば、コンポーネント開発は膨大なリソースを必要としないため、小規模で尖った技術を持つ企業(当時の文化オリエント/現メシウス、ASP、ニュートン、アドバンスソフトウェア等)に適した領域でした。

ナルボは1987年に国内初とされるDOS用GUIライブラリ『PC Pops Library』をリリースした歴史を持ちます。だからこそ、時代の変化とともにコンポーネント分野へ進出したのはごく自然な流れでした。

時代は流れ、セキュリティリスク、ブラウザ依存(IEの終了)、クラウド化の波により、ActiveXの時代は終焉を迎えました。

しかし、その技術魂は消えていません。

『タイムビュー』の正統後継として誕生したWebコントロール『Time View for Web』は、かつて以上の洗練されたUIを備え、着々と進化を続けています。

「日本から世界へ」

1996年に掲げたあの日の炎は、今もナルボの中で静かに、しかし情熱的に燃え続けています。

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