ワークフローEX 〜茨の道から生まれた、逆転のソリューション〜【サイドビュー】

ナルボの歴史において、大きな転機となったヒット作がある。ソリューション製品として初の成功を収めた「ワークフローEX」だ。
しかし、その誕生の裏には、暗闇の中で泥臭くあがいた「迷走の時代」と、起死回生をかけた「大きな覚悟」があった。
01. 迷走の中で見つけた、泥臭く「面倒な道」を選ぶ覚悟
2000年頃、ナルボは大きな壁にぶつかっていた。これまで軸としてきた「ソフトウェア部品(コンポーネント)」のビジネスモデル。満を持して投入した「データアクセスコレクション」の手ごたえは薄く、ExcelやWordに組み込むアドイン製品もヒットには至らない。
当時の僕たちには、製品の本当の価値をユーザーへ届けるマーケティングも、営業力も決定的に不足していた。
そんな折、1995年来の付き合いであるシステムラボの代表・清水さんと頻繁に会食を重ねていた。システムラボ社は、天才的な情報収集力を持つ清水さんと、米国帰りの技術力あふれる草島さん(テクナレッジ社代表)という最強タッグで、着実に自社ソリューションをヒットさせていた。
彼らのビジネスをじっと観察して、ハッとさせられた。システムラボのソリューション型ビジネスは、一見すると非常に手間がかかり、面倒に見える。そしてナルボは、「その面倒なことから無意識に逃げていた」のだ。
「迷走して、気持ちも枯渇しかけているなら……いっそ、一番面倒なビジネスに飛び込んでみよう」
この愚直なまでの開き直りこそが、ナルボがソリューション製品へと一歩を踏み出す原点となった。
02. 「これでダメなら終わりにしよう」覚悟のコンセプト
1999年、大手ゼネコンのNK社様から「稟議システムのプロトタイプを作れないか」と声がかかる。短期間でプロトタイプを形にし、本開発へと進む中で出会ったのが、膨大な行列が並ぶ「勤務表」だった。
「これだけ使い慣れたExcelのまま、ワークフローとして回せたら一番楽なのでは?」
直感した僕は、「申請フォームがExcelシートそのままのワークフロー」というコンセプトを提案。だが、当時はWebブラウザ中心(シンクライアント)へ移行する過渡期。「クライアントのExcelを使う」という提案は、時代の流れに逆行するように見え、あえなく不採用となった。
だが、一度芽生えたこのコンセプトは、どうしても捨てきれなかった。
- 「Microsoft製品に依存するリスク」
- 「クライアント側のExcelを制御する難しさ」
- 「時代のトレンドとの逆行」
茨の道になることは百も承知だった。しかし、「面倒なことをやる」と決めたナルボに迷いはなかった。
「このコンセプトでダメなら、もう事業を終わりにしてもいい」
それほどの確信と腹をくくり、ナルボ単独での開発がスタートした。
03. 技術の愚直な積み重ねが「ワークフローEX」を生む

そこから1年、開発に没頭した。当時は最新技術だったClickOnceを採用し、アプリの自動更新と配布をスムーズ化。電子捺印には、自社で磨いてきた「e-スタンプ」や「e-ハンコ」の技術を惜しみなく注ぎ込んだ。
世の中のワークフローシステムは、専用のエディタでいちいちWeb画面を作り直すのが当たり前。だが「ワークフローEX」なら、社内で既に使われているExcelやWordの申請書がそのまま使える。
導入の手間もコストも圧倒的に抑えられるこの強みを下げ、2005年、ついに「ワークフローEX」をリリースした。
名前には、ポジティブな想いを込めた。EX = Excellent(優れた)、Exciting(わくわく)、Exquisite(洗練)、Extraordinary(見事)。
想いは届いた。現場の業務に悩む企業へ、この製品はまっすぐに刺さっていったのだ。
04. 信頼がつないだ大舞台:静岡県庁様・富士ソフト様との出会い

「ワークフローEX」の真価を証明する、大きなチャンスが訪れる
1. 静岡県庁様(2007年)
全庁約40,000名が利用する超大規模な人事給与システム。実績の浅い生まれたての製品を採用することは、静岡県庁様にとっても大きな冒険だったはずだ。
「使い慣れたExcelをそのまま使え、バックエンドでデータ分析もできる。他にはない製品だった」
そう評価していただき、見事落札。職員の方々に「使いやすい」と浸透していった。リスクを取って製品の真価を見抜いてくださった静岡県庁の皆様、そして間に入り骨を折ってくださった静岡情報処理センターの皆様(特に当時執行役員の山崎さん)には、今も感謝の念が尽きない。
2. 富士ソフト株式会社様(2009年)
続いて訪れたのが、IT大手・富士ソフト様の実績だ。5社7製品がひしめく厳しいコンペの中、勝ち抜いたのは「ワークフローEX」だった。
譲れない条件であった「現場の操作性」と「セキュリティ」が高く評価されたのだ。導入後、ペーパーベースでは見えなかった業務のボトルネックが可視化され、全社的な業務改革へとつながっていった。
リスクを恐れずナルボを信頼して決断してくださった富士ソフトの皆様、東証コンピュータシステムの松倉社長。関わってくれた一人ひとりの「人」との信頼が、ナルボを育ててくれた。
05. チャレンジャーとしての誇りを胸に
2007年には、マイクロソフト主催の「Microsoft Innovation Award 2007」にて、記念すべき第1回の優秀賞を受賞。独自性とイノベーションが公式に認められた瞬間だった。
かつて失敗に終わったと思われたコンポーネント製品(e-ハンコやe-スタンプ)の開発ノウハウが、巡り巡って「ワークフローEX」という大輪の花を咲かせた。「過去の失敗も、泥臭い努力も、何ひとつ無駄ではなかった」と確信できた。
現在(2026年)。市場には「AppRemo」をはじめ、ナルボと同じコンセプトを掲げる強力な競合製品が登場している。リソースや営業力で勝る上場企業にシェアを奪われる場面もあり、決して楽な戦いではない。
けれど、僕たちは思う。「あのコンセプトは正しかったのだ」と。大手が後から追いかけてくる市場を、一番最初に切り拓いたという自負。
「申請フォームがExcelシートそのままでいい」という価値を最初に世に問うたパイオニアとしてのプライドを胸に、ナルボはこれからも、現場に寄り添う真摯なモノづくりを続けていく。